ユーザーインタビュー / 静電塗布装置 マイクロミストコーター 埼玉大学工学部機能材料工学科 
福田武司助教

導入事例:Micro Mist Coater 静電塗布装置、埼玉大学工学部機能材料工学科 福田武司助教 導入事例:Micro Mist Coater 静電塗布装置、埼玉大学工学部機能材料工学科 福田武司助教

「静電塗布法を用いた有機薄膜太陽電池」で、ドイツの論文誌で年間の最優秀論文に選ばれ注目を集めた埼玉大学工学部 機能材料工学科助教 福田武司先生に、当社の「Micro Mist Coater静電塗布装置」について伺いました。

(コンテンツ作成日 2016年11月)

福田武司先生の研究目標についてお聞かせください。

静電塗布法で従来手法では実現できない構造を有する有機薄膜太陽電池を実現して、新しく実用レベルの製造技術として確立することが最終目標です。そのためには、これまでの他の塗布技術では実現できなかった同一溶媒で溶かす有機材料の積層化やマルチノズルを用いて深さ方向に比率が変化する混合薄膜の成膜技術、溶媒蒸発速度の制御による高分子材料の配向制御などの各種要素技術を確立に取り組んでいます。具体的には静電塗布法で成膜した有機薄膜の分子配向を評価し、その最適化した条件を利用して有機薄膜太陽電池の高効率化を検証していくことが研究の中心となります。

最近取り組んでいるのは半導体量子ドットを用いた太陽電池の製造技術として静電塗布法の適用を目標としています。半導体量子ドット太陽電池は数μm程度の厚膜が必要であり、酸化亜鉛ナノロッド上に成膜するので微細な空隙を埋めることができる静電塗布法の利点が活かせると考えています。

成膜技術を用いた最近の主な研究成果についてお聞かせください。

静電塗布法を用いた有機薄膜太陽電池では、ドイツの論文誌から評価していただき、年間の最優秀論文に選ばれ、注目を集めました。最近では、静電塗布法において光学顕微鏡を組み合せた液滴の着弾状況の実時間評価が可能になり、それを利用した有機薄膜中の分子配向を制御できるようになりました。また、この技術を活用すると複数の層を積層する場合に下地の有機層が溶けているかどうかが成膜しながら確認することができます。さらに、通常の直流電源ではなくて、パルス電圧を用いて、複数のノズルから溶液を交互に成膜することで、通常の塗布技術では実現できない成膜中での膜中での混合比率を制御できるという構造も実現しています。

しかし、この太陽電池の製造技術としての実用化には、太陽電池自体の発電効率の向上や信頼性の確保だけでなく、製造技術としての安定性などまだいくつかの課題を解決する必要があります。

NTEのMicro Mist Coater 静電塗布装置を導入した理由と用途をお聞かせください。

学生:高比良 和也さん、高橋 晃宏さん、戸田 明日来さん

ナガセテクノエンジニアリング株式会社は静電塗布装置の分野において、塗布安定性や使い勝手といった点で他社よりも優れており、また開発段階ではありますが、微細な金属ノズルの開発など技術開発やサポートなどの面で優位性があります。さらに、私の方で提案した光学顕微鏡を用いた液滴の着弾状況を確認する機構を付与するなど、各種のカスタマイズにも積極的に取り組んでいただきました。そのため、いくつかの会社の同様の装置を検討した結果、ナガセテクノエンジニアリングの静電塗布装置を導入しました。

最近では、有機薄膜太陽電池や有機EL、量子ドットを利用したデバイスなど幅広い用途に本装置を活用しており、多くの研究成果につながってきました。研究者として新しい手法を提案できる喜びをナガセテクノエンジニアリングの静電塗布装置と実現してきたと実感しています。

NTEの製品やサービス体制について期待することなどご意見をお聞かせください。

ナガセテクノエンジニアリングの技術は数100μm程度の太いノズルを用いて大容量・高速成膜に優位性を持っていますが、 厚さが100nm程度の太陽電池では微小液滴を吐出できるノズルが重要となってきます。また、細さだけでなく、 内部の傾斜構造も重要であり、これらの要求を満たすノズルを機械加工で実現されつつあり大きな期待をしています。

静電塗布装置に限らず製造装置はどうしても不具合が発生することがあります。 ナガセテクノエンジニアリングは多様な用途で量産機展開も進めているとのこと。 「Micro Mist Coater静電塗布装置」の販売増加に伴い、タイムリーな対応が維持できるよう、国内外の自社拠点の活用も推進され、 量産の停滞や研究遅れが生じないよう、更なるサービス体制の充実に期待をしています。

今後の研究展開についてお聞かせください。

静電塗布法を用いて塗布型の太陽電池の実用化に寄与できる研究成果を出していきます。大学の研究者としては静電塗布法の新しい基盤技術を確立し、ナガセテクノエンジニアリングの量産化技術と組み合わせて世の中に本技術を普及させていきたいと思っています。

また、今後の科学技術の発展には若い研究者の活躍が重要です。ナガセテクノエンジニアリングの装置で研究を進めながら成長した学生たちが、社会に出て活躍できるような研究・教育体制を構築していきます。

ありがとうございました。

お客様概要:
埼玉大学 工学部 機能材料工学科
URL:http://www.fms.saitama-u.ac.jp/
埼玉大学 工学部 機能材料工学科 鎌田研究室
URL:http://www.fms.saitama-u.ac.jp/lab/kamata_l/index.html
所在地:〒338-8570 さいたま市桜区下大久保255 埼玉大学 工学部 機能材料工学科